COLUMN
2021.09.21
2021年春、個別最適な学びの実現を目指す「GIGAスクール構想」の下、全国の子どもたちに一人一台ICT端末が付与されました。教育業界のデジタル化に伴って、各社デジタル教材や学習用アプリの開発に力を入れており、今後それらのニーズが増えていくことが予想されます。
今回光文書院では、現場におけるICT端末を使用したデジタル学習の実態や今後に対する期待感について、全国各地の小学校にお勤めの先生方を対象にアンケート調査を実施いたしました。今回のコラムではその結果をご紹介し、デジタル化の進む小学校現場の今とこれからについて考えてみたいと思います。
実施アンケート概要
期間:2021年6月21日~2021年7月1日
調査方法:インターネットリサーチ
回答者数:全国各地の小学校教員男女377名
調査主体:株式会社光文書院
目次
一人一台端末の納入状況についてお聞きすると、今回ご回答いただいた先生方のうち約90%の方が「はい」、すなわち納入済みと回答されました(Q1)。
そこから、担当学年を持ち一人一台端末の活用を始めている先生133人に対して 、納入後の活用状況についてもお聞きすると、約80%の方が「企業のデジタル教材を利用している」と回答していました。また、自作やほかの先生方が作成した教材を利用されている先生も30%ほどいらっしゃいました(Q2)。
中でも自作教材について具体的にお聞きすると、「プレゼンテーション機能を利用した資料共有」「授業内で活用する写真や動画の共有」といった回答が多く見られました。資料や写真、動画などを瞬時に共有できるデジタルの特性を、授業に活用している先生が多いようです。
学校生活のどのようなタイミングで端末を利用することが多いかをお聞きすると、いずれの学年においても「デジタルドリルでの予習や復習」「資料動画の閲覧」「授業中の発表など協働学習」の選択が多く見られました(Q3)。
また、3年生以上の学年になると「ブラウザでの調べ学習」の回答が多いことがわかります。これは理科や社会の授業時、調べ学習のタイミングでの利用が多いためと予想されます。
一方、「テストの実施」「宿題の提出」で利用していると回答した方は、ほとんどの学年で10%未満となりました。成績の推移や宿題の提出状況など、子ども個人に紐づく情報の管理が必要になる機能については、あまり浸透しておらず、普及には時間を要するであろうことがうかがえます。
企業のデジタル教材を利用中の先生方に、デジタル教材が子どもたちの学習において効果的だと思うかをお聞きすると、「非常に効果的だと思う」「効果的だと思う」が合わせて71.5%となり、多くの先生方が子どもたちの学習に効果的であると感じていることがわかりました(Q4)。
また、効果的だと思う理由を具体的に書いていただいたところ、次のような回答をいただいています。
【子どもの学習意欲が上がる】
・文字を書くことが苦手だったり、嫌な子にとってはデジタルで学習できるのが楽だし、楽しいようだから。
・子どもたちが進んで取り組むことで、定着に良い影響がある
・画像、動画、音声などの情報により、子どもたちの注意喚起や意欲の向上、学習の効率に役立っている。
【デジタルならではの機能が学習に役立つ】
・今まで煩雑だったカードへの記録が、写真や録音などを用いることでより活用しやすくなっていると感じるから。
・インターネットを活用した調べ学習を容易に行うことができる。
・わかりやすい。映像だと理解がふかまる
こういったプラス面での回答がある一方で、「どちらとも言えない」を選んだ先生方からは懸念の声も寄せられました。
【「どちらとも言えない」理由】
・タブレットを使うことで子供たちの学習意欲があがる場面があるが、低学年には操作が難しく、学習内容をする前の操作につまずく児童が多い。そのため、予定していた時間配分をオーバーすることがある。
・子供たちに動画で資料を提示することができ、理解させることが可能。しかし、子供たちの情報リテラシーが不十分なため、一方的に信じてしまう可能性もある。
このようにデジタル教材に対してプラス/マイナス様々な見解がある中、Q1で、デジタル教材が既に学校に「納入されている」と回答した先生294名に対し、デジタル化に向いていると思う教材についてもお聞きしました(Q5)。
「教科書のデジタル化」「ドリルのデジタル化」に対しては、「子どもたちの学習において向いている」との回答が60%超の一方、「先生の校務において向いている」と回答したのは50%未満に留まりました。
「テストのデジタル化」については、「子どもたちの学習において向いている」との回答が24.5%と低い一方で、「先生の校務において向いている」と回答が約60%にのぼりました。教科書・ドリルとテストで異なる様相を呈しており、デジタルテストは先生の校務負担削減への寄与が期待されているという点で、一定の需要があることが予想されます。
別問で、先生の校務の効率化においてデジタル化してもらいたいアイデアもお聞きしたところ、「テスト・ドリルの自動採点」「子どもの苦手の自動分析」「成績の一覧化」などのコメントが多く挙げられ、こういった機能を持ち合わせたデジタル教材の開発に対して、需要があるようです。
「デジタル教材の活用によって子どもたちの学力がどう変化するか」、教科別にお聞きすると、算数、理科、社会、英語の4教科で「大きく向上する」「向上する」と回答された先生がそれぞれ合わせて60%以上いらっしゃいました(Q6)。
デジタル教材の活用に対して、こういった積極的な姿勢がうかがえる一方、国語では「大きく向上する」「向上する」を選ばれた先生は約40%に留まりました。
併せて、デジタル教材の活用によって低下すると考える能力について具体的にお聞きすると、「書く力」に関連する回答が多くみられました。
【低下すると思う能力】
・考えを書く、説明するなどの記述式の能力
・ものを書いたり、計算をして確かめるなど、手を使って考える作業。
・文字を書くこと、定規やコンパスなどで作図をすること
・ノート記述が減るので、メモを取ったり、書いたりする能力が、低下すると思います。
国語では、漢字や文章を「書く」機会が多いため、子どもたちの能力が「向上する」との回答が低くなったと予想されます。
これに対しては、現場での活用事例を共有しながら、「書く力」を低下させずに効果的にデジタル教材を活用していく方法を模索・提案していく必要があると考えます。
最後に、今後デジタル教材に期待することについてもお聞きしました(Q7)。
結果をみると、「子どもたちが楽しんで勉強できる」との回答が約80%、「子どもの学びの定着や学力向上」との回答が約60%と、デジタル教材の活用によって、子どもたちにプラスの影響がもたらされることに何よりも期待が寄せられていることがわかります。
また、「デジタル教材と紙教材を併用して使用できる」と回答した先生は約50%、「先生の校務効率化につながる」と回答した先生は約45%と、充実した機能に対する期待感がうかがえました。
一方で、今後端末を利用していくにあたっての懸念点も多数寄せられています。
【一人一台端末の利用への懸念点】
・児童数に対する通信環境が貧弱。大きい学校と小さい学校のPC管理や通信環境の格差。
・家庭学習でも取り組んでみたいが、家庭の経済的な理由による格差が生じないか。
・先生の仕事量が増える、やったことがない新しいことを学ぶ必要がある。
・通信速度が遅いことで、本来できることがスムーズに進まない
端末の活用が求められる一方で、通信環境がまだ整っていなかったり、端末を扱うノウハウの醸成が十分でなかったりと、先生方の間に不安が広がっていることもまた事実です。こういった課題の解決に挑戦しつつ、子どもたちが楽しみながら学びに向き合える機能を持ったデジタル教材が求められていると考えます。
今回の調査で、現場の先生方は、現在販売されているデジタル教材に一定の満足感を持ちつつも、子どもが楽しめる教材や先生方の校務効率化に貢献できる教材など、今後の進化にさらなる期待を寄せていることがわかりました。挙げられた懸念点もしっかり認識しながら、弊社も、今回の結果をぜひ今後の教材開発に活かしていきたいと思います。
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