「プレ漢字プリント」とは
東京学芸大学教授 小池敏英

1年生のときには漢字の学習に積極的に取り組んでいた児童の中に、2年生になって、漢字の学習が苦手になる児童が出てきます。
ドリルをすぐに放り出してしまう子、教科書などの音読が苦手な子、漢字の小テストが半分もできない子、ノートの文字がぐちゃぐちゃな子…。その原因には、学習障害(LD)だけではなく、読み書きの発達の偏り、注意力が育っていないことなど、さまざまなことが考えられます。
しかし、どんな児童であっても、適切な支援によって、学習を進めることは可能です。
もし、「くりかえし漢字ドリル」にどうしても取り組めないのであれば、無理やりドリルで反復練習させるのではなく、その児童に合った他の手立てを考えてみることが大切です。
その一つの手立てとなるように作ったのが「プレ漢字プリント」(2・3年生の漢字に対応)です。
学習性無力感におちいらないために
人にはそれぞれ、得意なことと不得意なことがあります。大人であれば、経験から、自分が身につけたいものをどのように学習するか、無意識に工夫することができます。英会話を身につけたければ、さまざまな方法から選択します。リスニング用教材を聞く人もいれば、書いて覚えようという人もいるでしょう。
でも、小学校の低学年では、自分が何が得意で、何が不得意なのか気づくことはできません。どんな学習をすれば身につくのかも分かりません。
発達に遅れのある児童の場合、いくら練習しても、その成果が出ないという結果になることがあります。成果の出ない努力(たとえば、漢字の反復練習)を無理やり強いた場合、「いくら努力しても対処できない」ということを「学習」してしまい、学習全般に対して無気力になるという結果が生じます。これを「学習性無力感」といいます。こうなってしまうと、将来にわたり、学習に対する苦手意識がついてまわることになりかねません。
「プレ漢字プリント」で配慮したこと
「プレ漢字プリント」は、次のようなことを配慮して作りました。
(詳しくは、「指導の手びき」をご覧ください)
<児童のもつ力への配慮>
- 聞く力の強い児童のための「ことばでおぼえる」課題。
- 読む力が弱い児童にも取り組みやすい課題配列。
- 視覚的にイメージできるようにイラストを掲載。
- 漢字の「部品」を意識できる課題。
<達成感が得られる紙面>
- 短い時間で完成できる課題。
- チャレンジしてみようと思える楽しい課題。
- 手がかりのある課題。